肝臓の基礎知識


脂肪肝ってどんな状態?

 

  細胞に脂肪がたまった状態です

健康な人の肝臓に脂肪はほとんど蓄積していませんが、その量が過剰になつた状態を脂肪肝」と呼びます。

以前は脂肪のかたまり(脂肪滴)が肝細胞の30パーセント以上に蓄積した状態をさしていましたが、最近では5パーセント以上で脂肪肝と診断しています。

肝臓に沈着する脂肪のほとんどは、中性脂肪。
口から入った脂肪は小腸で脂肪酸などに分解され、肝臓に送られて再び中性脂肪に合成されてから全身へ運ばれます。
しかし、合成する量が放出する量より多くなると肝臓の中にたまり、脂肪肝となるわけです。

中性脂肪は、脂質だけでなく、余分なブドウ糖からもつくられることから、脂肪だけでなく、糖分の摂り過ぎも脂肪の蓄積につながります。
近年、脂肪肝は年々増加し、健康診断で脂肪肝を指摘される人が増えています。

脂肪肝の原因は

アルコールか生活習慣が大きな原因です




脂肪肝はその原因によって大きく2つに分けられます。
お酒の飲み過ぎによる「アルコール性脂肪肝」とNAFLDと呼ばれる「非アルコール性脂肪性肝疾患」です。

一般に脂肪肝は、飲酒によるものと思われているようですが、現在日本におけるアルコール性脂肪肝は200万人以下。
それに比べてNAFIDは1500万人近いといわれます。
年齢別で見ると、男性は中年層、女性は高齢層で多くなつています。

その原因の多くは肥満や糖尿病、脂質異常症、高血圧といった生活習慣病。
日本人の食生活は、欧米化と飽食で、肝臓の許容量よりも多くの脂肪や糖分を摂っており、さらに車社会で歩くことが少なくなつて、脂肪肝になりやすい環境にあります。
また、逆に過度のダイエットによる極度の飢餓状態でも脂肪肝は起こるので、特に若い女性は注意が必要です。

この他の原因としては、ある種の薬剤による肝障害に伴うもの、消化管等の手術後に起こるもの、遺伝的な代謝異常による ものなども挙げられます。
最近では、睡眠時無呼吸症候群の人にも脂肪肝が多いことが分かっています。
脂肪肝は身近な病気。
飲酒をしないからといって、油断は禁物です。

脂肪肝臓を放置すると

肝炎、肝繊維症、肝硬変へと進行する場合も

通常の脂肪肝であれば、肝臓に炎症が起こつたり、肝硬変、肝がんに進行したりするケースは少なく、10年間フォローしても5パーセント以下です。
しかし、アルコール性脂肪肝の場合は、毎日大量にお酒を飲み続けると、確実に肝臓はダメージを受け、アルコール性肝炎、肝線維症、肝硬変 へと進む恐れがあります。

1日5合以上を10年以上続けている大酒家はもちろん、男性は1日3合以上を5年以上、女性であれば1日2合以上を5年以上続けている常習飲酒家といわれる人たちも、進行の危険にさらされています。

ただし、お酒を飲まないからといって安心というわけではありません。
NAFLDには、あまり進行しをい脂肪肝の単純性脂肪肝と炎症を伴う進行性の脂肪肝であるナッシュNASH(非アルコール性脂肪肝炎) の2種類があるからです。
NASHを発症した場合は、そのままにしておくと炎症がひどくなり、徐々に線維化が進み肝臓が硬くなつていきます。
そして10年後には10〜20パーセントの人が肝硬変や肝がんに移行するといわれているので注意が必要です。

脂肪肝にいくつかの要因が加わって発症します

NASHが広く認識されるようになったのは1998年頃。

そのメカニズムなど明らかになっていない部分もありますが、様々な原因によって起こるNAFLDがNASHに移行するのには、 酸化ストレスや生理活性物質の一種である炎症性サイトカイ鉄の蓄積、脂質の過酸化などの二次的要因と共に体質(遺伝)的要因が加わって起こると考えられています。

NASHは30代以降の男性に多く見られ、女性は閉経を迎える50代頃になると、急激に増える傾向があります。
男性の場合は、30代に入ると太り始め、内臓脂肪がたまりやすくなるためです。
一方、女性は月経で血液と一緒に体外に排出されていた鉄が、閉経により肝臓に蓄積されることと、女性ホルモン(エストロゲン) の分泌が低下するためです

早期発見のために

年に1度、健康診断を必ず受診しましよう

肝臓は沈黙の臓器≠ニ呼ばれる通り、生命活動の大切な役割を果たすために、少々のダメージを受けても、壊れた部分を自力で治しながら黙々と我慢強く働き続けます。
従って、よほどのことにならない限り、痛みなどは現れず、自覚症状はありません。
肝臓が正常に機能しているかどうかは、健康診断で血液検査や超音波検査を受ければすぐに分かります。
血液から肝機能を診るには20以上の項目をみます。
中でも代表的なものは、血液中の酵素の量を測定して、肝細胞の破壊の程度を診るAST(GOT)、ALT(GPT)や肝細胞の障害や胆汁の流れ具 合を診るγ(ガンマ)GTP。
脂肪肝の場合、AST、ALT値が共に高くなります。
アルコール性の場合は、ASTがALTよりも高くなり、γGTPも上昇します。
また、NAFLDの場合は、ALTがASTよりも高い値を示すのが特徴で、次の項目に該当する人はNAFLDと診断されます。

●アルコール摂取量が男性は1日30g以下(ビール中瓶1本または日本酒1合)、女性は20g以下。
●ALTがASTよりも高い状態が一定期間続いている。
●肝炎ウイルスなど、他に肝障害の原因がない。
また腹部の超音波検査では肝臓に脂肪がたまっていると、白く光って見えるので、すぐに「脂肪肝」と診断できます